不動産の差押えの解除方法や不動産の差押に至までの流れを中心に不動産の差押について解説していきます。
不動産が差し押さえられる可能性がある、または既に差し押さえられてしまったため差押の解除を行いたいと悩んでいる方もいらっしゃると思います。
不動産における差押の解除要件は法律で定められているため、しっかりと手順を踏みルールを理解する事が大切ですが、文言が難しかったり手続きが複雑で分かり難いと言う方も少なくありません。
目次
不動産の差押えの解除要件|不動産などの差押えについて
差押えとは「債権者」が債務者の財産を確保しその中から滞納分を支払ってもらうために行う行為で、不動産の差押には大きく分けて2種類のケースが存在します。
1つ目は購入した物件の住宅ローンや借入金の返済などが滞り、債権者から不服が申し立てられ裁判所から認めた場合に法務局を通して差押手続きが執行されます。
この場合に差押えの対象となるのは、基本的に住んでいる家(不動産物件)のみとなるのが一般的です。
2つ目は国税や各自治体に納める地方税などの税金を滞納し続けている場合に差押えが執行されます。
税金の滞納によって差押えが執行される場合、不動産の差押えの他に預金・自動車・家財道具・家電製品など不動産以外の個人所有物も差押えの対象となっています。
こちらの場合、直ぐに不動産が差し押さえられると言う事はなく、優先順位としては自動車や家財道具の差押えが優先され、不動産の差押えは最終手段として用いられるケースが多くなっています。
不動産の差押えの解除要件|差押えまでの具体的な流れ
差押えに至までの流れは2つのケースが存在します。
住宅ローンなどの返済が滞っており債権者からの申し出があった場合には、裁判所に申し立てを行い支払督促を行う準備が行われ、まず始めに「督促状」が裁判所から届きます。
その際に債務者は滞納金を支払うか裁判所に支払についての異議を申し立てる事ができますが、それぞれの対応を無視した場合、債権者は強制執行を裁判所に申し立て差押えの準備を行う事ができます。
その後、「仮執行宣言付督促申立書」が届き裁判所から法務局へ強制執行の発令が行われ差押えが行われます。
対して税金などの滞納による場合には、裁判所での手続きは無く裁判所からの通知も発送されません。
送られてくるのは、国や地方自治体の税務署や各役所から発送される「督促状」がまず始めに送付されてきます。
この督促状送付後も税金などの未納状態が続くと次に「催告書」と呼ばれる督促状よりも、より具体的な納付期限などが記載されたものが送られてきます。
最後に送られてくるのが「差押予告書」という物で、期限内の納付とそれらが行われなかった場合には法的手段として差押えを行うと言う宣告が記されており後日、行政の職員が差押えに来ると言う流れになっています。
差押えの前に行政の職員が税金の納付勧告や生活実態の調査を含めて債務者宅を訪れ、直接的に納付を呼びかける場合もあり対応は自治体によって異なりますが、差押予告書を送付後2週間から1ヶ月を目処に差押が行われるケースが一般的となっています。
不動産の差押えの解除要件|差押後の公売によるデメリット
差押え後は、差押えを解除しなければ持ち主の希望金額で不動産の売却が行える「任意売却」を行う事はできません。
そのまま税金などの滞納が続いた場合、最終的に行われるのが「公売」です。
この公売は売却する側にとって大きなデメリットが発生します。
公売を行う側の国や地方自治体は、税金などの滞納金を徴収できれば本来の目的を達成できるため売却額は最低限の金額になる場合が一般的です。
具体的な金額としては本来、市場で取引される金額の70%~80%程度の価格でしか売却されず、元の所有者としては大きく損をしてしまう結果となります。
「競売」と呼ばれる所謂オークションの様な形式の売却方法とは異なり、設定金額が入札者により上乗せされると言う事は無く金額が固定されているため売却額が上がると言う事も期待できないことが特徴です。
また、住宅ローンの返済が無いまたは少ない場合には、金融機関などの強制執行よりも早く官公庁からの公売手続きが行われ、早い段階で住まいを失う確率が高いこともデメリットと言えます。
不動産の差押えの解除要件|差押えの解除方法
税金の滞納によって不動産などの差押登記が行われた場合、こちらの希望金額で不動産等を売却する事のできる「任意売却」ができなくなってしまいますので、まずは差押えの解除を行わなければなりません。
基本的には、公課の交付要求が解除されていれば(滞納している税金を納付すれば)差押えの解除手続きを行う事が可能です。
具体的には差押えの対象となっていない所有物を売却し、滞納している税金分を支払っていく方法や、自動車や家財道具などが既に差押えられている場合には財産の換価による公売または競売によって滞納分を収める、滞納している額と同等の財産を国や地方自治体に提供するなどの方法があります。
また、例外として不動産が公売に出され契約に至らなかった場合には、買い手が付かない(滞納分が徴収できない)と判断され差押えが解除されるという法律も施行されています。
その他には、民間の支援団体と弁護士のサポートを受け適切な税金滞納返済プランの作成や一部納税の計画書を提出するなどの代理交渉を官公庁と行う事で、差押えの解除を行う事も可能となっています。
不動産の差押えの解除要件|税金を納付しなくても不動産の差押えが解除できる場合
不動産の差押を解除する方法・要件の中に公売を行ったが買い手が付かず差押えが解除されると言う要件がありますが、具体的にはどの様な手順を踏むのか説明していきます。
幾度も公売に出された不動産が売却に至らず差押えの解除を申請するためには、なぜ売れなかったのか、たまたま売れなかっただけなのか、書類により報告されている事以外にも問題はあるのかなど、詳しく現地調査を行う必要があります。
そのため、不動産鑑定士からの評価が記載された鑑定書が必要となり、これらの条件が重なっているから売却できなかったという証拠書類を提出しなければなりません。
この鑑定書を元に債権者が精査を行い、売却の見込みが立たないと正式に判断された場合、差押えの解除が行われる仕組みとなっています。
差押えられた不動産が元に戻ってくると言う反面、不動産の売却で税金の滞納分が納付できないと言う面もあるため注意が必要です。
また、法律に則って「破産手続きの開始」が行われた場合、破産手続きの決定が下されるまでの間は税金の納付状態に関わらず差押えが一時的に中断されると言う事が法律で定められています。
不動産の差押えの解除要件|まとめ
今回は、不動産の差押えの解除方法や不動産の差押えに至までの流れを中心に不動産の差押えについて解説してきましたが、差押後に行われる不動産の公売は債務者にとって大きなデメリットになると言う事が分かります。
差押えの解除については、難しい手続きなどは特に無く滞納分を納付していけば差押えの解除手続きが行われますが、昨今では支援団体などのサポートを受ける事もできますので、督促状が届くなど早い段階で相談する事をおすすめします。