アパート売却の仕訳処理とはどうすればよいのでしょうか。
アパートなどの建物を売却する場合には、資産の移動に伴って適切な会計処理を行わなくてはなりません。
その際には、収益のほかにどんな費用が発生したのかを把握することも必要です。
また、法人と個人では収益の考え方が異なることから、会計処理も異なります。
アパート売却の仕訳|法人の会計処理
まず、法人がアパートなどの建物を売却する場合には、すべての収入を合算した上で経費を差し引き、利益を計算する必要があります。
このとき、収入の種類が異なっていても、分けて計算することはありません。
そして、合計して算出された利益には税金が課されます。
これを「課税所得」といい、法人の税率は、資本金と課税所得によって決定するのが一般的です。
アパート売却の仕訳|法人の仕訳
では次に、法人における実際の仕訳をみてみましょう。
会計処理においては物事が起きた順番に仕訳を記入します。
そこで建物を売却する際は、流れを把握しやすくするために、契約時や売却時といった、それぞれのタイミングで仕訳をしておくことが大切です。
このため、適切な仕訳ができるよう、科目の種類や方法を知っておかなくてはなりません。また、このとき、減価償却も忘れずに行います。
建物売却時の仕訳
法人がアパートなどの建物を売却をする場合には、減価償却費と資産の仕訳をしなければなりません。
これは売却した年も必要で、対象となるのは期首日から売却日までです。
この場合は、勘定科目の借方に「減価償却費」、貸方は「建物」となり、金額は同額となります。
また、頭金を受け取っていた場合には借方に「普通預金」とその金額、貸方は「前受金」などとし、借方と同額を記入します。
その後、売却時には借方に「前受金」、貸方には「建物」と受け取った金額を記入。
さらに次行の借方に最終金の受取先となる「普通預金」といった科目と金額を記入します。
そして、貸方の科目は「建物」と記入するとともに、期首帳簿価額から減価償却費を引いた金額も記入し、建物売却時の利益は「固定資産売却益」といった科目を使用しましょう。
法人の減価償却
建物の売却時に仕訳が必要になる減価償却は、法人と個人では金額が異なります。
これは、個人の場合「強制償却」として扱われることから、1年間の減価償却費をすべて経費にする必要がありますが、法人の場合は「任意償却」として、減価償却費の範囲内であれば自由に経費を決められるためです。
つまり、法人の場合減価償却費を調節することで、最終的な利益を調節することが可能になります。
アパート売却の仕訳|個人の会計処理
一方、個人の場合には法人とは異なり収入の種類をそれぞれで分ける必要があります。
たとえば、事業で得た収入は事業所得ですが、建物などの資産を売却して得た収入は「譲渡所得」となり、法人のように合算することはできません。
このため、発生した経費もそれぞれの収入に合わせて分け、対応させます。
具体的には、建物の売却にかかった経費であれば譲渡所得、商品の仕入れなど事業収入を得るための経費であれば事業所得といった形です。
また、個人の場合は所得金額の計算や税金の計算も所得の種類によって異なるため、適切に仕分けする必要があります。
アパート売却の仕訳|個人の仕訳
個人の場合も建物を保有している場合は、必ず減価償却を行わなければなりません。
ただし、建物を売却する際には、帳簿上の金額である「簿価」と同額であることは極めて稀です。
このため、簿価とは異なる金額で売却する際には、貸借対照表で現在の簿価を逆仕訳して処理します。
売却額が簿価よりも高い場合
簿価よりも高い金額で建物を売却した場合には利益が発生するため、まず借方に「普通預金」など売却金の受取先を記入し、貸方には減価償却費を引いた簿価を記入します。
その上で差額の利益は、貸方に「事業主借」で処理します。
売却額が簿価よりも低い場合
簿価よりも低い金額で建物を売却した場合には損失が発生するため、会計処理は高い金額で売却した際と同様ですが、損失として借方は「事業主貸」で処理します。
アパート売却の仕訳|土地も売却する場合
建物とともに土地も売却する際には、法人、個人を問わず、所有目的に合った処理が必要です。
投資目的ではなく個人事業主や企業が事業で使用するための土地であれば、売却によって利益が発生した場合、固定資産税売却益として処理するため、仕訳先の科目は「営業外収益」や「特別利益」となります。
また、売却によって損失が発生した場合は、「営業外損益」や「特別損失」として処理します。
このほか、不動産会社が顧客に商品として土地を売却した場合には、売上として会計処理が必要です。
このように、不動産売却時の会計処理は、法人と個人のほか、目的によっても異なります。
また、これによりその年度の利益や税金にも影響を及ぼすため、会計処理は非常に重要です。
このため、不動産を売却する際には、内訳や仕訳の種類を明確にし、適切な会計処理をすることが大切です。