マンションを買ってもらう場合の名義で生じる問題について紹介をします。
一般市民にとっては縁のない話ですが、テレビドラマなどでは子供が金持ちの親からマンションを買ってもらうシーンがよく出てきます。
子供は好き勝手にマンションを使いますが、マンションの登記上の名義によって対外的な立場が全く異なります。
目次
マンションを買ってもらう場合の名義|不動産登記簿の名義の有無で異なる立場
民法の177条には以下の規定があります。
「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」
ここでいう「対抗」とは、効力の生じた法律行為(親からマンションの所有権を移転)を主張することです。
つまり、「第三者に対抗することができない」ということは、当事者間で生じた法律行為の成立を第三者に主張できないという意味になります。
民法177条は第三者に法律行為を主張するためには「登記」が必要だということを示しており、登記至上主義の立場をとっています。
マンションを買ってもらう場合の名義|不動産登記簿の名義の他に抵当権の確認が必要
登記は基本的に早い者勝ちです。
例えば、親がマンションの名義を子供に変更する前に、そのマンションを担保にして借金をしてしまうと、そのマンションに抵当権が設定されます。
抵当権が登記されてしまうと、親が借金の返済ができなくなった場合、抵当権者はマンションを競売にかけます。
子供が『親の借金の前に貰ったマンションだ』と主張しても、法的な対抗要件が無いから無駄です。
仮に、親から名義変更をしてもらったとしても、抵当権の登記された後では同じことです。
抵当権の付いたマンションを貰ったに過ぎません。
なお、早い者勝ちなので、先に名義変更の登記をしておけば抵当権の設定を阻止できます。
マンションを買ってもらう場合の名義|他人名義の場合は所有権が無効
不動産登記の特徴として、「公信力が無い」ことが挙げられます。
公信力とは権利があることを信じて法律行為を行った人を保護する力のことです。
例えば、Aさんが知人からテレビを購入した際、そのテレビが知人の盗んだものだとはAさんには全く分かりませんでした。
この場合、知人は無権利者(テレビの所有権が無い)ですが、「権利がある」と信じて取引したAさんを保護するため、無権利者との取引であっても、所有権はAさんにあると認められます。
しかし、不動産登記には公信力が無いため、登記上の無権利者に対して権利があると信じて取引をしたとしても、所有権は得られません。
従って、親が他人名義のマンションを無権利者から購入しても、子供が貰うことは不可能です。
マンションを買ってもらう場合の名義|名義が親のままだと使用貸借
他人から不動産を借りる時には賃料を支払うものですが、無償で借りることがあり、それを「使用貸借」と言います。
いずれにしても、使い終わったら返すことが前提となり、返さないことが前提であれば、贈与と見做されます。
なお、無償ということは経済的利益を得ていることになり、税法上のルールでは経済的利益を「みなし贈与」として贈与税が課されます。
ただし、親子間の使用貸借については、「利益を受ける金額が少額である場合」、または「課税上弊害がないと認められる場合」には、強いて贈与税を課さないと規定されています。
ただし、当該マンションの賃料の相場が贈与税の年間非課税額の110万円を大きく超えると、課税されないとは言い切れません。
マンションを買ってもらう場合の名義|名義を自分にすると贈与
子供が親からマンションを買ってもらった際に名義を子供にすれば、当然それは親から子供への「贈与」となり、受け取った子供に贈与税が課されます。
なお、マンションの場合は現金の贈与と違い、「評価額」が使用されます。
土地と建物を所有するため、土地の評価額と建物の評価額が別々に算出されます。
仮に、親から成人の子供へ課税価格2,600万円のマンションが贈与された場合は、特例税率が適用されて以下の贈与税額が課されます(課税価格が2,600万円の場合、基礎控除額110万円、税率45%、控除額265万円)。
(2,600万円-110万円)×45%-265万円=855.5万円)ちなみに、贈与税を親が支払うことはできません。
親が立て替えると、その金額が贈与となります。
マンションを買ってもらう場合の名義|登記を自分名義にすることが重要
マンションを貰ったとしても、登記をしなければ第三者には対抗できません。
自身の権利を主張するためには登記が必須であり、不動産を活用するにしても、不動産を担保にお金を借りるにしても登記手続きが前提になります。
なお、親からでもマンションを貰えば贈与になり、贈与税を支払わなければなりません。
自分の財力を超える物は貰わないのが賢明です。