不動産の滅失登記の費用と手続きについて紹介をします。
不動産の登記の中には「滅失登記」というものがあります。
滅失という言葉からも、不動産が無くなったということを記録する登記です。
建物自体は解体業者に依頼して取壊してもらえますが、滅失登記をしないと建物が存在しないのに、登記上は建物が建ったままの状態になってしまいます。
目次
不動産の滅失登記の意味と怠った場合に生じる費用
建物の滅失登記は解体や火災などによって建物が存在しなくなった場合に、建物の登記を閉鎖することであり、建物の所有者に課せられた義務です。
滅失登記をすると、登記の表題部の原因及びその日付欄に「閉鎖」と記載されます。
なお、人の出入りが1年以上なく、管理が不適切な状態にある空き家は「空家等対策特別措置法」に基づき、「特定空家等」に判定されます。
判定後に自治体から指導・勧告を受けたにも関わらず改善されない場合は、固定資産税の「住宅用地の特例による軽減措置」の適用除外になります。
さらに放置を続けると、自治体は建物などの解体や修繕などの命令を行い、命令に違反すると50万円以下の罰金が科されます。
命令後にも改善が見られない場合、自治体は強制的に建物などの解体や除去の代執行を行います。
そして、かかった費用は所有者負担となります。
不動産の滅失登記を怠った場合の費用面でのデメリット
建物の滅失登記は所有者に申請義務がありますが、その義務を怠ると以下のような費用が生じます。
1.1ヶ月以内に申請しないと10万円以下の過料
不動産登記法では「建物が滅失した時はその滅失の日から1ヶ月以内に当該建物の滅失登記申請をしなければならない」と規定しています。
さらに、同法によって、申請を怠った時は10万円以下の過料に処すると規定されています。
2.解体した建物の固定資産税・都市計画税の支払い
建物の滅失登記を行わないと、解体して存在しない建物の固定資産税や都市計画税を支払い続けることになります。
その他、土地に建物を建てる時には建築確認申請をしますが、申請した土地上に存在しないはずの建物の登記があると、建築確認が下りません。
不動産の滅失登記を自分でする場合の費用と手続き
滅失登記は専門的知識が必要ないため、自分でもできます。
登録免許税などの費用は要りませんが、資料の取得代金として1,000円前後がかかります。
滅失登記の大きな流れは以下の通りです。
1.家屋番号を調べます
固定資産税納税通知書で家屋番号を確認します。
2.登記事項証明書などを取得します
建物の所在地を管轄する法務局へ行き、登記事項証明書を取得します。
登記事項証明書に記載されている建物の所在地番、家屋番号、建物の種類、構造、床面積、所有者の住所と氏名を確認します。
3.建物滅失登記申請書類の作成します
取得した登記事項証明書を基に、建物滅失登記申請書類を作成します。
4.登記申請書類を法務局へ提出します
提出は郵送でも可能です。
提出後2週間程度で登記が完了となります。
不動産の滅失登記を専門家に依頼した場合の費用
滅失登記はいくら自分でもできるからといって、やはり不安が先立ちます。
そこで、専門家に依頼することにしますが、誰に頼めば良いのか分からないのが普通です。
誤解している人もいますが、滅失登記をできるのは土地家屋調査士だけであり、司法書士はできません。
司法書士は不動産の権利関係の登記が専門で、滅失登記などの不動産の表題に関する登記は土地家屋調査士だけが代理申請を行えます。
報酬の目安としては凡そ4~5万円ですが、建物の棟数や構造、大きさなどにより変動する可能性があります。
なお、土地家屋調査士に依頼すると、建物滅失登記の必要書類である建物滅失登記申請書・案内図・取壊し証明書・解体業者の法人登記事項証明書・解体業者の法人印鑑証明証は全部用意してもらえます。
抵当権の付いた不動産の滅失登記と費用
抵当権とは、債務不履行があった場合に、他の債権者に優先して弁済を受けられる権利のことです。
そして、通常では土地と建物のセットで抵当権が設定されているため、抵当権者(金融機関など)の承諾を得ないで建物を取壊すことはできません。
ただし、滅失登記においては抵当権者の承諾書を添付する必要はありません。
その代わり、法務局から抵当権者の承諾をとっているか確認されます。
そもそも、抵当権の抹消登記はローンを完済した時点で登記しておくべきですが、していないことも少なくありません。
抵当権の抹消をしなくても問題はありませんが、売却する場合は必須です。
なお、抵当権の有無が滅失登記費用に影響することはありません。
不動産の滅失登記を依頼する場合は費用とのバランスで判断
建物の滅失登記は自主的に行う登記のため、滅失登記の有無が法務局に知られることはありません。
しかし、過料という行政罰があり、また固定資産税・都市計画税の過剰納付や融資の拒否などの可能性があるため、速やかな対応が必要です。
なお、自分で行うかどうかは申請における手間暇と、土地家屋調査士に支払う費用とのバランスで判断します。