タワーマンションの固定資産税が高い税率に改正される件について紹介をします。
マンションを購入すると、毎年所在地の市町村から「固定資産税」が課されます(地方税)。
ただ、同じマンションに住んでいるからといって毎年同じ税額が課されるわけではなく、税額の変わることがあります。
それは、固定資産税が資産価値を基準に決められているからです。
目次
タワーマンションの固定資産税を高い税率に改正|新しいほど高い税額になります
新築や中古に関わらず、マンションを購入すると建物と土地の所有者になるため、建物と土地各々の「固定資産税」を納めることになります。
固定資産税の税額は「固定資産税評価額×標準税率1.4%」で計算されます(自治体によって税率の違う場合あり)。
なお、固定資産税評価額とは、固定資産課税台帳に登録された不動産(土地・建物)の価格のことであり、国土交通省が年に1回定める「公示価格」の70%を目安に金額が設定されています。
また、建物部分の固定資産税評価額は経年劣化が考慮されて年々下がるのが一般的なため、新築時の方が高くなっています。
一方、土地部分の税額は年ごとの評価によって上下します。
タワーマンションの固定資産税を高い税率に改正|軽減処置が切れるといったん高い税額になります
土地の評価額は一定で、建物部分の評価額のみ変動することを前提に固定資産税を算出すると、以下の税額になります。
例えば、専有面積80㎡、新築時の建物の固定資産税評価額1,000万円、土地の固定資産税評価額3,000万円とします。
1.新築
建物部分に関しては新築時から5年間は半額になる軽減特例、及び土地部分には200平方メートル以下の「小規模住宅用地」における課税標準額が1/6に軽減される適用措置を加味します。
- 建物税額:1,000万円×1.4%×1/2=70,000円
- 土地税額:3,000万円×1.4%×1/6=70,000円
計70,000円
2.築6年
建物部分の軽減特例(5年間)は終了しますが、年数を経ていることで評価が変わります。
東京都の定める「経年減価補正率表」では、6年後の経年減価補正率は「0.8335」と定められています。
- 建物税額:1,000万円×0.8335×1.4%=116,690円
- 土地税額:3,000万円×1.4%×1/6=70,000円
計186,690円
以降、年数を経るごとに税額は低くなります。
タワーマンションの固定資産税を高い税率に改正|高い税率にする目的
平成29年度の税制改正大綱において、タワーマンションの場合は高層階になるほど税率が引き上げられ、低層階になるほど税率の下がることが決まりました。
タワーマンションとは高さが60mを超える居住用超高層建築物のことです。
今回の見直しの主たる目的は、富裕層への課税強化とタワーマンションの高層階と低層階での不公平な税負担の解消です。
従来、タワーマンションでは固定資産税評価額が階数に関係なく床面積のみに応じて算出されていたため、1億円以上もする高層階の所有者も数千万円程度の低層階の所有者も同じ税額を負担していました。
また、この制度を「節税」に利用している富裕層がターゲットになっています。
タワーマンションの固定資産税を高い税率に改正|税率の中身
平成29年度の税制改正では、タワーマンション全体に課税される固定資産税額は変わりませんが、階層に応じて割り振る固定資産税の税率が変わります。
今回の改正では高層階になるほど増税されて、低層階になるほど減税されます。
- 高層階:1階上がるごとに約0.25%増税
- 中間層:税率の増減ほとんどなし
- 低層階:1階下がるごとに約0.25%減税
また、階数による税率の変更だけではなく、部屋に付帯している設備も評価の対象となります。
例えば、天井の高さが5.3mの居室や、眺望を楽しめる浴室など、他の居室と比べて特別な設備がある場合は、税率が高くなります。
なお、新しい税制は平成29年4月以降に契約を締結した新築のタワーマンションが対象になります。
タワーマンションの固定資産税を高い税率に改正|計算方法
具体的な固定資産税額の計算は以下になります。
例えば、50階建てのタワーマンションで、各階の居室数が10戸、一棟の総居室数が500戸(床面積は全て同一)、一棟全体の固定資産税は1億円だったとします。
- まず、一棟全体の固定資産税を部屋数で単純に割ります。
1億円÷500戸=20万円 - 階層別専有床面積補正率で税額を調整しますが、補正率は1階を100とし、階が1つ増すごとに、10を39で除した数(0.25641)を加算していきます。
階層別専有床面積補正率=(階層-1)×0.25641+100
上記の補正率でもって固定資産税を割り出すと以下になります。
- 50階:112.5641%、21.1万円
- 40階:110%、20.6万円
- 30階:107.4359%、20.2万円
- 20階:104.8718%、19.7万円
- 10階:102.3077%、19.2万円
- 1階:100%、18.8万円
1階は平均より1.2万円安くなり、50階では平均より1.1万円高くなります。
タワーマンションの固定資産税を高い税率に改正|難しくなる節税対策
一般市民がタワーマンションを購入するということは滅多にないため、影響を受ける人はほとんどいません。
今回の税制改正でもって、タワーマンションの居住者に対してより公平な固定資産税が課されるようになりました。
従って、以前は富裕者が節税対策としてタワーマンションを活用していましたが、今後は節税に利用することが難しくなることが見込まれます。