アパートでの火事の損害賠償責任についてはどうなっているのでしょうか。
今回は、火災の原因別にアパートの住人(賃借人)が追求される責任と、アパートのオーナー(大家)が追求される責任、またそれぞれの損害賠償に対する保険について、解説していきたいと思います。
目次
アパート 火事の損害賠償｜賃借人が火災を発生させた場合
まずは、賃借人が火災を発生させた場合の損害賠償責任は、賃借人にどの程度過失があったかがポイントとなります。
火災に関しては、「失火責任法」という法律があり、火災を発生させてしまった人に対する損害賠償責任が定められています。
そこには「失火者に重大な責任がなければ、損害賠償責任を負わせない」という旨の内容が記載されています。
ここでいう重大な責任というのは、火事が予見できるような行為のことなので、例えば、タバコの火の消し忘れや、天ぷら油を熱して放置していたなどです。
つまり、賃借人が十分に注意していた上で火災が発生してしまった場合、賃借人に対して、損害賠償責任は発生しないのです。
たとえ隣室や建物全体に火災の被害が出たとしても、それらに対する損害賠償責任も負わないことになります。
しかしながら、賃借人は賃貸契約時に大家と「退去時に原状回復する義務」に関する契約を交わします。
そのため、失火責任法による責任は無くとも、自室が焼けてしまって回復することが出来なければ、契約により自室に対する損害賠償責任は発生します。
アパート 火事の損害賠償｜大家が火災を発生させた場合
次に、大家が火災を発生させた場合の損害賠償責任についてです。
ここで大家が火災を発生させたというのは、例えば、大家がアパートに住んでおり火災を発生させた場合や、賃貸人の占有部以外に火災の原因があった場合などです。
大家が火災を発生させ、賃借人の部屋に影響が出た場合、賃借人に対して損害賠償責任が発生します。
具体的な損害賠償責任の範囲としては、賃料の日割り計算での返却、敷金の返却をした上で、家財の弁償や賃借人が新居を探すまでのホテル代など、賃借人が元どおり暮らし始めるまでの様々な補償をする必要があります。
アパート 火事の損害賠償｜賃借人、大家共に火災発生原因でない場合
では、続いて賃借人、大家共に火災発生原因でない場合の損害賠償責任についてはどうなるかです。
不審火などで賃借人、大家のどちらも火災発生の原因に関与していない場合、どちらにも損害賠償責任はありません。
賃借人の家財等に影響があった場合も、火災によりアパートに住み続けることはできなくなった場合も、大家は賃借人に対して損害賠償責任はありません。
なお、アパートに住み続けられなくなった場合には賃貸契約終了となります。
賃貸契約終了に伴い、大家は賃借人に対して、賃料の日割り計算での返却、敷金の返却は行う必要があります。
アパート 火事の損害賠償｜火事による様々な保険について
アパートで火災が発生した場合に賃借人に適用される保険にはどのようなものがあるでしょう。
代表的な3つを紹介します。
家財保険
この保険は自分の所有する家具や家電に損害があった場合に費用を保証してくれるものです。
借家人賠償責任保険
この保険は借りている部屋に損害を与えてしまった際に原状回復の費用を保証してくれるものです。
「借家人賠償責任保険」ではあくまで自分の部屋の原状回復のための保険であるため、賃借人が火災を起こしてしまった場合の隣室の費用については保証されません。
個人賠償責任保険
この保険は隣室や隣家などに損害を与えてしまった場合の費用を保証してくれるものです。
内容を確認は保険会社によって多岐にわたります。
「家財保険」「借家人賠償責任保険」は賃貸契約の際に勧められる保険に含まれているのが一般的ですが、「個人賠償責任保険」は含まれていない場合があるので、賃借人は確認が必要です。
アパート 火事の損害賠償｜大家に関する損害賠償保険
アパートで火災が発生した場合に大家に適用される保険はどのようなものがあるでしょう。こちらは代表的な2つを紹介します。
施設賠償責任保険
この保険は建物の管理不備などが原因で、賃借人などに損害を与えた場合に費用を保証してくれるものです。
家賃収入保険
この保険は火災で貸していた部屋が住めなくなってしまった場合、大家の家賃収入がなくなってしまいます。
その際に、契約時に定めた期間だけ、家賃収入の保証をしてくれるものです。
上記のほかに、大家が火災を発生させてしまった場合は、賃借人と同様に「個人賠償責任保険」が適用される場合もあります。
アパート 火事の損害賠償｜火事における損害賠償 まとめ
アパートの火事について、損害賠償責任と適用される保険の内容を簡単に解説させていただきました。
本記事で解説した内容は一部分ではありますが、火災を発生させてしまった場合の損害賠償の責任範囲や、様々な保険の保証内容などを知っていただき、火災を起こしてしまった際の対応や、火災保険加入の検討などに役立てていただけたらと思います。