マンションの一括受電の問題点について紹介をします。
電力が自由化されてから2年が経ち、新電力会社のシェアが2倍を超えています。
ただ、新しい料金プランに積極的に乗り換える世帯はそれほど多くないのが実態です。
そんな中、大規模マンションを中心にした「一括受電」の導入が新電力会社から提案されていますが、大きな流れにはなっていません。
目次
マンションの一括受電における電気料金のメリットと問題点
マンションの一括受電における最大のメリットは、電気料金が安くなることです。
料金体系はマンションによって異なりますが、専有部分(各戸)で数%以上、共用部分については数十%もお得になります。
一括受電サービス業者大手の中央電力のサイトでは「共用部分」で20~40%、「専有部分」で最大10%も安くなると謳っています。
また、導入にあたって変圧器の設置などの工事が必要となりますが、居住者にはそれらの費用負担が生じません。
ただ、電気料金の問題点として、各戸ごとに自由に電力会社を選んだ方がお得になるケースがあったとしても、マンション一括受電は全戸の加入が条件のため、個別に他の電力会社と契約することができません。
マンションの一括受電における設備管理の問題点
マンションの一括受電では、マンションの管理組合が一括受電サービス業者と高圧電力の契約を行い、各専有部分の居住者と低圧電力契約をします。
そうなると、マンション管理組合はマンション各戸の電気メーターの検針、各戸の電気料金の算出、請求という時間と手間の問題が生じますが、一括受電サービス業者がそれらの業務を代行します。
一括受電サービス業者は以下などの役割を担います。
- 高圧一括受電の導入
- 切替工事
- 高圧受電設備の年次保安点検
- 各戸の検針・電気料金の算出・請求
専有部分・各戸は電力会社との個別の契約は終了し、一括受電サービス業者と管理組合との契約になります。
専有部分・各戸は管理組合と契約することで電力が供給されます。
マンションの一括受電における10年契約の問題点
電気事業法の改正により、分譲マンションの専有部分について、マンションの管理組合が新電力会社と高圧電力の契約を行えるようになりました。
ただ、一括受電は10年契約という制約があるため(その後は一般的に1年~3年の自動更新)、途中で解約するには、マンションの管理組合が一括受電サービス業者に対して、高額な違約金を支払うことになります。
一括受電を導入する際に、変圧器や新しいメーターの設置に対する費用を負担しない代わりに、10年という長期での契約が条件となっています。
ここで、問題となるのが、10年も経てば日本の電力事情が大きく変わっていることが考えられることです。
こうした長期契約は将来現れるかもしれない選択の機会を奪うことになります。
マンションの一括受電における保守点検の問題点
一括受電を導入すると、1~3年に一度、停電にして点検しなければなりません。
つまり、高圧一括受電によって、設備は自家用電気設備となることから、自家用電気設備に対する電気事業法の以下の定めを守らなければなりません。
- 電気主任技術者がいること
- 保安規定を作成し経済産業省に届け出ること
- 毎年または3年毎に停電点検をすること
停電時間はおおむね1~2時間程度です。
エレベーターや冷暖房が一時的でも使えなくなるというのは不便ですし、在宅で仕事をしている人にとっては代替の手だでが必要になります。
また、自宅で介護や治療を受けている人や、保温が必要な熱帯魚などを飼っている人にとっては大問題になります。
マンションの一括受電における居住者の合意形成の問題点
マンションの一括受電を行うには、管理組合総会での決議で3/4以上の賛成が必要です。
また、総会で承認されたとしても、入居者全員の申込書が必要なため、1人でも導入に反対する人がいると、導入が進みません。
一括受電導入に反対する理由には以下などがあります。
- 電力の自由化で様々なサービスが提供されているが、電力会社を選べない。
- 電力会社の付加サービス(見守りサービスなど)を受けられない。
- 電気とガスのセット割引やガソリンが安くなるプランなど、新しい割引サービスを選ぶことができない。
- 10年後の電力事情がどうなっているか、予測ができない。
マンションの規模が大きくなればなるほど、合意形成が難しくなります。
将来的なマンションの一括受電における必要性の問題点
現状、一括受電によって電気料金の安さを享受しているマンションがありますが、電力の自由化によって、電力会社の選択肢が多くなっています。
そんな折、あえて1社独占で、しかも10年という長期にわたる契約をする必要性があるのかという点で、疑問が多くなっています。
また、マンションというのは出入居の入れ替わりが多くあります。
将来的な電力のニーズを考慮して判断することが重要です。