不動産の告知事項の病死したケースの取り扱いや告知事項はいつまで続けるべきかなど、不動産の告知事項について解説していきます。
不動産を取り扱う方の中には、告知事項対象物件に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
一般的にはその物件で人が亡くなったことや大きなトラブルなどが発生し事故物件となった場合に、契約者に対してどの様な事が起きた物件なのかをお知らせするための事項ですが、病死のケースに於いても告知事項の対象となってしまうため、扱いが難しいと言う悩みがあります。
目次
不動産の告知事項で病死のケース|不動産に於ける告知事項とは
不動産に於ける告知事項とは、俗に事故物件として取り扱われる様なトラブルを抱えた物件のことを指し、物件内で自殺や事件等によって人が亡くなった場合に注意を促す事項で、事故や事件後に物件を貸し出す場合や売りに出す際、契約者へ人が亡くなった或いは事件などのトラブルが発生した物件であることをお知らせする役割があります。
この告知事項は、宅地建物取引業法により事故物件として物件を取り扱わなければならなくなった場合には、心理的瑕疵に考慮して必ず告知を行うよう法律で定められています。
つまり、物件に何らかのトラブルが発生した過去のある事故物件の場合には、貸し主や売り主は契約者に対して過去にどの様な事が発生した物件なのかを告知する義務が発生するのです。
不動産の告知事項で病死のケース|病死の場合でも告知事項を説明しなければならない?
告知事項は物件で自殺や事件等によって人が亡くなった場合に告知を行う義務が発生しますが、事件性の無い病死や老衰死などの自然死の場合も告知事項を説明しなければならないのでしょうか?
結論から先に言ってしまうと、病死や老衰死などの事件性の無い病死や自然死に関しては、原則として告知の義務はあるものの状況によっては否定をしても構わないなど明確な定理は定められていません。
平成18年に東京地方裁判所で下された判例では、病死や自然死があった物件に対して6ヶ月以上が経過しているため告知の義務は発生しないという判決も出されています。
そのため、基本的には物件で人が亡くなった場合には告知をする義務が発生しますが、病死や老衰死は心理的瑕疵に該当しないため事故物件としての告知義務は発生しない傾向にあります。
しかし、病死や老衰死でも死亡から長時間が経過し遺体の損傷が激しい場合や悪臭が発生してしまっている場合、テレビなどで多数の人に情報が公開されてしまった場合には、心理的瑕疵に該当するため告知事項として報告を行い事故物件として扱わなければならないケースも出てきます。
不動産の告知事項で病死のケース|物件の部屋以外で病死した場合は事故物件になる?
契約している物件で人が亡くなった場合には、原則として告知事項に情報を記載する義務が発生しますが、物件の室内以外の敷地やマンション・アパートの廊下、屋上や駐車場などの共用部で病死した場合には、告知の義務が発生するのかと言う疑問が生じます。
一般的には、検死解剖や司法解剖を行い自殺や事件性の無い突発的な病死や慢性的な疾患が原因で病死した場合には、心理的瑕疵に該当しないため告知を行う義務は発生しません。
また、心肺停止の状態で発見された場合にはその場で死亡確認をする事は少なく、救急車の中や病院内で死亡確認を取る事が多いため、直接的に死亡したのは物件内でないと言う事も告知の義務が発生しない理由です。
その為、基本的に物件の部屋以外の場所で病死した場合には事故物件になる事は殆どありません。
不動産の告知事項で病死のケース|告知事項の説明はいつまで?
告知事項は病死の場合でも原則的には説明を行わなければならない義務ですが、告知を行わなければならない期間は決まっているのでしょうか?宅地建物取引業法では、心理的瑕疵に配慮するため人が亡くなった物件の場合には、必ず告知を行わなければならないと定められていますが、明確な告知期間の説明に関しては記載がありません。
平成18年には事件性が無く病死や自然死明確となっている物件に対して6ヶ月以上が経過した物については告知の義務は無いとする判例が下されるなど、病気や自然死に対しては心理的瑕疵に該当しない事から長期間告知を続ける必要は無い傾向にあります。
特に病死の場合は、社会的な影響力や近隣の影響を受けることが少ないため、比較的に短い期間の告知で済まされる事が多くなっていますが、病死とは言えども人が亡くなっている物件という事実には変わりがありませんので、後々のトラブルを防ぐ意味でも、病死した物件の状況に応じて一定期間は告知事項の説明を行うと良いでしょう。
不動産の告知事項で病死のケース|告知事項ありだからと言って全てが悪い訳ではない
告知事項ありと説明されると、どうしても人の死やトラブルを抱えた物件というマイナスなイメージを連想して入居を拒まれてしまうなどのケースが発生しますが、告知事項があるからと言って必ずしも事故物件とは限らない現実もあります。
特に病死や老衰死の場合は、自殺や事件等の場合と比べて部屋の汚れ具合などが少ない傾向にあり、発見が早ければ遺体の損傷も最小限で済み悪臭が発生する前に対処することができるため、心理的瑕疵に大きな影響を及ぼす事が少ないと言う傾向にあります。
物件内で家族に見守られながら静かに亡くなった場合でも告知事項ありと説明しなければならない事もあるため、一概に告知事項があるからと言って悲観することはありません。
告知事項ありの物件は一般的に価格が相場よりも抑えられているため、価格面で入居を希望する方もいらっしゃいますので、必要な説明を明確に行う事が一番大切なことになります。
不動産の告知事項で病死のケース|まとめ
今回は、不動産に於ける告知事項について病死したケースの取り扱いや告知事項はいつまで続けるべきかなど、不動産の告知事項について解説してきましたが、告知事項は該当物件でどの様な事案が発生したのか知らせる大切な情報となっており、できる限り遭遇したくない事象ではありますが、告知事項があるからと言って悲観する必要はありません。
病死の場合、早急に対処を行えば自殺や事件等の事故物件として扱わなければならない事態を避けることも可能ですが、病死とは言えども人が亡くなっている物件という事実には変わりがありませんので、後々のトラブルを防ぐ意味でも丁寧な説明を心がけることが最も大切な事となります。