マンションの契約前に支払う申込証拠金と契約時に支払う手付金におけるキャンセルの違いについて紹介をします。
マンションなどの不動産を購入する場合、契約に際して購入者が不動産会社に支払う金銭に「申込証拠金」と「手付金」の2種類があります。
手付金という言葉はよく知られていますが、その意味を申込証拠金と混同している人が少なくありません。
目次
マンションの契約前に支払う申込証拠金と契約時に支払う手付金では異なるキャンセル対応
マンションの購入で最初に支払うお金が「申込証拠金(申込金)」です。
申込証拠金というのは、買主がマンションの購入契約を結ぶ前に、購入意思を示すものとして売主に支払うお金です。
申込証拠金は予約金という意味があり、購入希望のマンションを押さえておくことが目的のため、支払わない場合もあります。
ただし、申込証拠金には売主に対する法的な拘束力はありません。
一方、手付金は契約成立時に買主から売主に対して支払われます。
あくまでも商慣習によって支払われているものですが、手付金には売買の当事者の勝手なキャンセルを制限する目的が含まれています。
なお、特別な取り決めが無い限り、手付金は法律上「解約手付」として扱われます。
このように目的が異なることから、両者ではキャンセルの時期や内容で、対応が異なります。
マンションの契約前に支払う申込証拠金と契約時に支払う手付金におけるキャンセル時の返還
申込証拠金の金額に対する規定があるわけではなく、あくまでも申込者の意思によります。
通例としては5～10万円ですが、場合によっては数千円程度のこともあります。
また、申込証拠金を支払えばいつまででもマンションを押さえておけるわけではなく、通常1週間から10日が有効期間とされています。
なお、申込証拠金は物件の押さえでしかないため、有効期間が過ぎたり、キャンセルがあったりして契約が成立しない場合は全額が返還されます。
なお、契約が成立した場合は手付金の一部や契約時の諸費用に充当されるのが一般的です。
手付金の金額に関しても規定はありませんが、売買価格の5～10％が相場になっています(20％以上は法律違反)。
そして、手付金は解約手付の役割があるため、どちらの側からの解約かによって処理が変わります。
当事者双方の都合でマンションの契約を契約前ではなく契約時に支払った手付金のキャンセルした場合の返還
手付金の持つ解約手付というのは契約が履行される前なら、双方に契約に対する解除権のあることを意味しています。
つまり、買主は手付金を放棄することで契約を解除でき、売主は受領した手付金を返還し、さらに手付金と同額のお金を買主に支払うことで(倍返し)、契約を解除できます。
従って、契約後にキャンセルした場合は手付金は戻りません。
なお、契約解除においては、両者とも手付金以外に損害賠償の義務を負いません。
ただし、売主がすでに名義変更の登記を行っていたり、あるいは買主が中間金を支払っていたり、引越準備をしていたりした場合は契約が履行されたことになるため、契約違反としての違約金を支払うことになります。
規定に則ってマンションの契約を契約前ではなく契約時に支払った手付金のキャンセルした場合の返還
不動産売買には通常、「ローン特約」というものがあり、買主がマンションの購入資金に充てるための住宅ローンを組めなかった場合、買主は無条件で契約解除が可能になり、手付金も全額返還してもらえます。
さらに、不動産売買においてもクーリング・オフ制度が適用されます。
従って、仮設テントでの販売や、自宅や勤務先での訪問販売など、不動産業者の正式な事務所以外で契約を交わした場合は、契約日から8日以内であれば無条件で契約の解除ができ、手付金も返還されます。
ちなみに、届け出されているモデルルームは正式な事務所と看做されるため、モデルルームでの契約はクーリング・オフの対象外となります。
マンションの契約前ではなく契約時に支払った手付金はキャンセルの有無に関わらず保全処置は必須
手付金の額が購入価格の10％を超える場合、あるいは1,000万円を超える場合は、宅地建物取引業法によって売主は手付金の保全措置を採らなければなりません。
保全措置といのは手付金を受領した後、買主に物件が引き渡される前に売主が倒産してしまうなどの事態が起きた場合に、手付金が確実に買主に返還されるようにするためのものです。
マンション売買の場合は、銀行などの保証や保険事業者による保証保険、指定保管期間による保管の中からどれかひとつを講じなければなりません。
なお、手付金の金額が要件を満たさない場合や、売主が宅地建物取引業者でない場合、業者間取引である場合は保全措置は不要です。
ちなみに、申込証拠金は保全措置の対象外です。
マンションの契約前に手付金のキャンセルへの対応を要確認
マンションの購入は非常に大きな買い物です。
手付金も当然、高額になります。
また、予期せぬことで契約を解除する必要の出ることがあります。
そのため、契約を交わす時には契約内容を十分に確認し、手付金や申込証拠金の取扱いがどうなっているのかをチェックすることが重要です。
特に、住宅ローンで購入するのが一般的なため、ローン特約の付帯は必須です。